「リバーシブル」
彼が新しいリバーシブルのブルゾンを買った。表が彼の好きな少しくすんだ青で、裏が私好みの鮮やかな赤。
裏にして着てみたら……ちょっとぶかぶかだけど、結構私に似合う。気に入っちゃった。
私は渋る彼にお願いして、一日おきに、ブルゾンを借りることに成功した。
今日は彼の日。青にして着ていく。次は私の日。裏返して赤にする。そのままハンガーにかけておいたら、
「面倒くさいから、青に戻しとけよ」と怒られた。でも私も面倒くさいから、いつも赤のまま。
赤、青、赤、青。毎日裏表されるブルゾン君。
「元に戻しておかないんなら、もう着るな」
着るたびに裏表することにうんざりしたのか、ある日彼がぶちきれた。
「やだ。私だって面倒くさい」   「じゃあ自分の買えば?」
「同じもの二着買ったらもったいないよ」   「だったら着るな。これは俺のなの!」
本当に、頑固なんだから。だったら、こんな「ひとこと」はどうかな?
「……だってこれを着てると安心するんだもん。あなたの匂いに守られてる気がするから」


次の日彼は、ブルゾンを赤のまま着ていった。……私の、勝ち!
鴻尚エリカさんのHP
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