「Blind world〜終わることのない悲しみ」

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第一話 哲人〜reborn

(此処は何処だ・・俺は何をしている・・俺は・・誰なんだ・・・・・解らない)

 男は、とあるテナントビルの一室にあるソファーの上に横になっていた。部屋の中は一切の照明が消えており、唯一、窓からの月明かりが部屋を薄明かりに照らしている。そして時折、外のネオンが部屋の中を彩っていた。

 俺は一体何時から此処にいるんだ。意識は徐々に回復している様だが、未だはっきりとはしていない様だ。過去の事を思い出せないのは・・・多分そのせいだろう。体も思う様に動かない。辛うじて指が動く程度だ。目を開ける事は出来たが、首を動かす事が出来ないため視界が利かない。
(いやぁ参ったな。これじゃぁ好きなタバコも吸えやしない。隣りに美人な看護婦でも居てくれたらな。・・・ん!?この部屋に誰かが居る。・・・誰だ・・)
 俺の傍にでも腰掛けて居るのだろうか、カチッという音と共に赤いタバコの火が俺の目に映った。
 「・・ん!?如何やら気が付いた様だな」
 その男はタバコの煙を軽く吐き出すと、俺の傍に来て話し掛けた。
 「気分はどうだ・・・ん?未だ話す事は出来んか。まぁ無理もない・・」男はそう言って、またタバコを咥える。
 「いいや喋れるさ。俺はこう見えてもお喋りなんだ。生まれた時の第一声は確か『タバコを一本くれないか』だったと思ったが」
 男は俺の顔を覗き込んで言った。「元気そうだな・・結構」男はニヤリと笑っている様だった。
 「体は動かないが、歌ぐらいは歌える。当分退屈しないで済みそうだ」
 「そうか体は動かないか。まぁ、明日の朝にでもなれば普通に生活が出来るだろう」
 俺は、自分の腕が動く様になっている事に気が付いていた。
 「それは良かった。で、あんたは誰なんだ。見た限りじゃホームヘルパーでもなさそうだが」
 男は立ち上がって言った。「まぁ、そのうち解るだろう。今は知らなくてもいい事だ。・・そろそろ時間の様だ。何か聞きたい事はあるか」
 「1つ頼みがある」
 「・・なんだ」
 男は、吸い掛けのタバコを揉み消しながら、素っ気無く対応する。
 「タバコを一本くれないか」
 「・・フッ」
 男は微かに笑い、そのまま部屋を後にした。

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