「Blind world〜終わることのない悲しみ」

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第四話 説子〜友情

 「ねぇ、セツ。あたし、ほんとにジョウダンでいったんだよぉ。わかってるよねぇ。ホントしらなかったんだってばぁ」恭子はもうしつこい。相手がうんと言うまでやめようとしない。一見幼稚っぽい言い回しだが、恭子が言うと半分脅迫めいている。
 「・・わかったよ・・・」わたしは恭子のペースに半分のせられていた。
 「えっ!いまなんていったの?」恭子はウルウルしたような目をして私の顔をのぞき込む。・・たぶんワザとだろう。
 「わかったっていったの!」もう、わたしはウンザリだった。いっつもそうやって・・・。
 「ホント?!よかったぁ。あたしぃセツにきらわれるんじゃないかとおもってぇ」恭子はいつもこんな感じで締めくくる。キモチわるぅとか思いつつも、ゆるしてしまう自分が情けなくなってくる。わたしは「ハァ」とため息をつく。
 「ところであんたさぁ、ひとりでアニキさがすっていったけど、なにかあてはあるわけ?」また、恭子の好奇心の虫が騒ぎはじめたらしい。
 「・・別に当てはないんだけど・・おにいちゃんの会社とかもわかんないし・・・」私は改めて自分の置かれている状況を思い知らされる。
 「わかんないってさぁ、あんたそれでどうやってアニキさがすのよぉ」そう言われればそうなんだけど・・・。
 「あんたのおやにはきいたぁ?おやならしってるんじゃないのぉ?」そのくらいの事はやってみた。だから、何もわからないってことが分ったわけで・・。けど、恭子からすればこんな私を見てジレッタサを感じているのかもしれない。
 「両親にも聞いたんだけど、お兄ちゃんは誰にも教えてなくて、ただヤバイ事はしてないって、それしか言わないんだって言ってた」私はそう言いながらさらに落ち込む。
 「それきっとヤバイことしてるよゼッタイ」恭子は少し冗談ぽく言う。
 「・・え!?」私は思わず声を出してしまった。
 「・・・えへへっジョーダン」恭子は気まずそうにそう言った。
 少しのあいだ無言の状態がつづいた。恭子が黙りこんでいる時は、たいがいなにか考えているときで、話しかけてもなにも反応しない。そしてその口からでる言葉は、きまって突拍子もないことが多い。しかも、少しニヤニヤしている。これはかなり重大だ。恭子からすれば、と〜ってもイイ事を思いついた時で、わたしからすれば、かなりヤバイ事になりそうな時である。
 「あのさぁ・・・」きた!『かなりヤバイ事』が・・・。
 「・・・あたし、セツのアニキさがしてつだおうとおもうんだけどいいかな?」
 「・・えっ?・・・えぇぇ!」わたしはこの驚きをおもいっきり表現してしまった。もちろん後先考えずに・・・。けど、こんな事わたしじゃなくたってゼッタイに驚いちゃう。もう、『ヤバイ』の『ヤバイ』が違ってる。私の考えていたことが、全部ガラガラと音を立てて崩れていくというよりも、私の築き上げてきたものが、爆弾によって一瞬で吹き飛ばされて、気が付くとチュンチュンと小鳥がさえずる朝に、チリチリ頭をした私がボーっと立っている、そんな感じだった。そんなことを考えていた私はハッとなった。目の前には、おこりんぼ顔の恭子がいた。
 「なによぉそのはんのうぉ。あたしがこういうこというのしんじらんないってかんじじゃない?」そう、そのとおりだ。けど、それは口にしなかった。その後のことが予想つくから。
 「い・いや、そういうことじゃなくて・・・」私はちょっと言葉につまってしまった。恭子はまだほっぺたを膨らませてるし・・・。
 「だったらなによぉ。なにがきにいらないわけぇ」恭子はそう言いながら、私の両肩に手をおくと、その手でゆっくりとゆすりはじめる。
 「・だ・だか・ら・そう・じゃな・くて・・・」体がゆすられてて、なかなかうまくしゃべれない。
 「だからなによぉ。いってごらんなさいよぉ」恭子の手はさらにゆすり続ける。
 「ちょ・ちょ・と・・ゆす・・ゆするの・・やめてよ!」私はやっとの思いで言い切った。恭子の手がピタッと止まる。
 「はい。やめました。はやくはなしてちょーだい」私の肩においてある恭子の手が少し力んでいる。
 「恭子の気持ちはとてもうれしいけど、たぶん私たちにはムリだと思う」私はとっさにそんなことを口にした。そんなことを言いながらも、自分で自分の言っていることに納得していたことは事実だった。
 「なによそれぇ。なんでむりだってわかるのよぉ」恭子はまだほっぺたを膨らませている。
 「・・わかんない・・けど、このことは私たちには手の届かないことの様な気がして・・・」私はそういうと、うつむいてしまった。恭子もそれ以上突っ込んでこなかった。

 二人は無言のまま家路を辿った。説子は不安と絶望感で一杯だった。恭子は説子に自分の力を否定された事で少し腹を立てていたが、それと同時にああは言ったものの、これから如何したら良いのか分からないでいた。恭子にはそれが悔しかった。

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